かねてより心配されていましたが、とうとう起きてしまいました。USBメモリの形をしたUSBキラーを用いた器物損壊事件(米国)です。
この事件の発生時には、ネットでニュースにはなりましたが、それ程の話題にはなりませんでした。
本稿では、この事件について振り返って、少し詳しい情報を読者の皆様と共有したいと思います。
1.事件の概要
本事件は、米国のニューヨーク州にある私立のS大学の卒業生Aが、S大学に侵入して、大学所有のパソコン等を多数破壊したというものです。
その際、使用された道具は、「USBキラー」と呼ばれる市販の携帯用デバイスであり、見た目はUSBメモリそのものです。
「USBキラー」は、相手側(電子機器)のUSBポートに接続(挿入)されると、相手側から供給される5ボルトの電流を昇圧して200ボルト以上の高電圧電流(サージ)を作り出し、それを相手側に送り出すものです。
パソコン等のUSBポートには、一般的にサージ保護回路が設けられていません。
従って、高電圧のサージ電流が内部を直撃したパソコン66台は、それぞれ一瞬のうちにスクラップとなったに違いありません。
2.事件の経緯
・ 2019年2月14日(木): Aは、S大学のキャンパス内の複数のコンピュータ作業室に無断で侵入して、59台のWindowsワークステーションと、7台のiMacコンピュータと、多数のモニタ及びデジタル演壇のUSBポートに「USBキラー」を順次接続して、これらの電子機器を破壊しました。
その際、Aは、「USBキラー」を接続する自分自身をiPhoneで録画したようです。
・ 2019年2月22日(金): Aは、ノースカロライナ州で逮捕されました。
・ 2019年4月16日(火): 被告人Aと米国連邦検事局との間で司法取引が成立して、被告人Aは、「USBキラー」をS大学所有のコンピュータ等に接続したことを認めました。
・ 2019年8月13日(火): 被告人Aに対して、12ヶ月の拘禁と、その後の1年間の監督指導付き釈放と、を命じる判決がなされました。また、58,471ドルの賠償を支払うようにも命じられました。
3.推測されること
・USBキラーはネット購入したものであり、犯行に使用したのは1個のようです。
・犯行の日時から、使用されたUSBキラーは、バージョン3の最新型ではないかと思われます。
・未決拘禁の期間が刑に算入されると仮定すると、現時点では、既に釈放されています。
・釈放されているとしても、監督指導付き釈放なので、遠くに行くことは許されず、ニューヨーク州内に居住しているものと思われます。
4.まとめ
コンピュータを含めて電子機器をスクラップ化するのは、その電子機器の弱点を考えれば比較的簡単です。
この点、USBポートを備えた電子機器については、USBキラーが非常に効果的であると思われます。
本事件は、USBキラーの能動的な態様に基づくものですが、将来的には、USBキラーの受動的な態様に基づくものが起きないとは言えません。
そういったものに巻き込まれないようにしたいものです。
以上、「USBキラーによる器物損壊事件(パソコン66台スクラップ!)」についてでした。