ノートパソコン(PC)は、電子基板、液晶ディスプレイ、キーボード等が1つのケースに格納された精密な電子機器です。現在、薄型化・軽量化が極限的に進んでいますが、残念ながら防水にはなっていません。本稿では、このようなノートPCのキーボード上に飲み物をこぼしてしまった場合(水濡れ時)に、どのように対応したらよいかについて、読者の皆様と情報を共有したいと思います。

1.飲み物トラブルの程度は軽度か深刻か?

ノートPCのキーボードに飲み物が少し掛かったが、キーボード内部に流れ込んでいないような軽度の場合は、濡れた部分をティッシュなどでサッと拭くだけで解決しそうです。

問題は、飲み物がキーボードの内部に入り込んでしまったか又はそう思われる深刻な場合です。

ノートPCのキーボードの下側には、一般に天板を介してマザーボード(電子回路基板)が配置されています。

キー間の隙間などから内部に入り込んだ飲み物は、この天板のおかげで、マザーボードへの飲み物の直撃は避けられます。

しかし、天板の穴やつなぎ目などを通して、飲み物が下側に更に侵入してマザーボードに至ります。

この侵入は極めて短時間の間に進行します。

飲み物がマザーボードに至った場合、電気回路がショートする恐れがあり、最悪マザーボードが破損します。

従って、直ちにノートPCの電源を切る必要があります。

2.ノートPCの電源を切るには?

電源を切る場合、通常は画面に従ってシャットダウンの操作を行います。

しかし、シャットダウンの操作(過程)は、思った以上に時間が掛かります。

そこで、緊急を要する非常時には、電源ボタンを長押しして、強制終了を行います。

これによって、より迅速に電源を切ることができます。

尚、ノートPCでは、一般にバッテリーを経由して動作するか又はバッテリーに切り換わって動作します。

従って、「電源コードを抜くこと」=「PCの電源を切ること」にはなりません。

また、余裕があれば、安全サイドの観点から、ノートPC本体からバッテリーを取り外しましよう。

3.PC内部への飲み物の侵入をさまたげる簡単な方法とは?

それは、本稿の最初の部分で種明かしをしてしまいましたが、ノートPCを逆さにすることです。

キーボードの表面(即ち、上面又は打面)が下を向くようにノートPCを配置します。

ノートPCを長い時間持っているのは大へんです。

例えば、キーボード表面と液晶表示面との間にタオルを挟んで僅かに開いた状態にします。

そして、邪魔にならない場所にノートPCを逆さにしたまま置いておきます。

タオルとキーボードの間に、吸水性の高いシート、例えば、キッチンペーパーを挟み込むと尚良いかもしれません。

4.ノートPCの復旧方法は?

飲み物の構成要素が水だけの場合と他の構成要素(糖分、塩分、油脂など)を含む場合とに分けます。

4.1  飲み物が飲料水の場合:

ノートPCの内部を十分に乾燥(水分を蒸発)させることによって、ノートPCの動きが復活することが大いに期待できます。

しかしながら、PCの内部を十分に乾燥させるのは、実際上、かなりの時間が必要です。

特に、水が各部品の内部(深部)に入ってしまったような場合、中々蒸発しません。

ノートPCの内部や各部品を乾燥させるために、ヘアドライヤや扇風機を使用して、冷風を当てるのが効果的です。

ヘアドライヤを通常の「温風モード」で使用するのは、熱に弱い電子部品を損傷させる危険性が高いので止めましよう。

乾燥のために暖かいコタツの中に部品等を短時間入れておくのも効果的かもしれません。

時間短縮のためには、可能な限りPCを分解して、部品や部分を個別に十分に乾燥させることが考えられます。

分解作業の際には、ビス等の部品が無くなり易いので、箱に入れる等して対策を図り、また、電子部品が静電破壊しないように静電手袋を着用する等、静電気には特に注意する必要があります。
ところで、飲み物をこぼしたことによる修理は、通常有償(自己負担、所有者の負担)です。

そのPCの製造メーカー関係者以外の者がPCを分解したときは、通常、保証適用外になります。

また、ノートPCの分解は、難度が高く、かなりのスキルが必要です。

従って、自力で必要以上に分解するようなことは避けるのが安全です。

いずれにしても、ノートPCの分解・乾燥の作業は、機械・電気を得意としない方にはかなりハードルの高いものになりそうです。

4.2  飲み物が飲料水以外のもの、例えば、ジュースの場合:

ジュースを構成する水分が蒸発しても、他の成分(糖分や塩分等)がPC内部に残ってしまいます。

残ってしまった成分は、キーの動きを阻害する恐れがあります。

また、残留成分が電子回路の不具合や部品の変質などの問題を将来的に引き起こす恐れがあります。

従って、安全・確実なノートPCの復旧(場合によっては、データの修復)のためには、専門業者に依頼することを検討した方が良いかもしれません。

5.専門業者に復旧を依頼する場合

飲み物トラブルを想定しておき、業者をネット検索などして、復旧時間や価格についての情報を予め得ておくと、万が一のときにも安心です。

業者によっては、乾燥作業等を施さずにそのままの状態で引き渡して欲しい旨を言われることがあります。

よって、飲み物トラブル時には、素人判断で行動する前に、直ちに業者に連絡して、その指示に従うのがおすすめです。

専門業者によるPCの復旧やデータの修復は、想像以上にお金と時間が掛かります。

場合によっては、復旧するための費用が、PC本体の購入価格に匹敵するぐらいのことすらあり得ます。

6.まとめ

ノートPCの操作中に飲み物を飲むことは、昼食時間のオフィスなどを見れば分かるように、珍しいことではありません。

また、日常、うっかり物を倒したり、引っ掛けることは、普通に起こります。

従って、誰でもがそういった飲み物トラブルに巻き込まれる危険性があると言えそうです。

ですので、飲み物はノートPCから離れた場所に置くなどと自分なりのルールを決めて、飲み物トラブルの被害を最小限にしていただけたらと思います。

以上、「ノートPCのキーボード上に飲み物がこぼれたときの対応方法」についてでした。